桜: さすが大晦日(おおみそか)。賑(にぎ)わってるね。
桜の祖父: そうじゃの。ところで丸子(まるこ)、大掃除(おおそうじ)は終(お)わったの?
桜: あ、野暮(やぼ)の事(こと)を聞(き)かないだよ。買(か)い物(もの)が終(お)わったらラストスパートかけるつもりなんだから。
桜の祖父: 丸子(まるこ)? まだ終(お)わっていないとは。こりゃ遺憾(いかん)。だったらちょっと帰(かえ)ったほうがいいの。
桜: あ、お爺(じい)ちゃん! わあ、美味(おい)しいそうだね!
桜の祖父: ま、丸子(まるこ)や。早(はや)く帰(かえ)らないとお母(かあ)さんが。
桜: 美味(おい)しいそうだね!
桜の祖父: これぐれもお母(かあ)さんには內(nèi)緒(ないしょ)じゃぞ?
桜: 分(わ)かっているよ。あ、どれにしようかな? プリンアラモードもいいしケーキもいいし。
桜の祖父: ま、丸子(まるこ)!
桜: あ、美味(おい)しいかった!
桜の祖父: それ、さっさっと買(か)い物(もの)を済(す)ませ。
桜: あ!
桜の祖父: ええ?
桜: これ出(で)てたんだ!
桜の祖父: ま、丸子(まるこ)、少(すこ)し急(いそ)いだほうが。
桜: あ!
桜の祖父: 今度(こんど)は何(なに)じゃ?
桜: お爺(じい)ちゃん、私(わたし)はハワイ行(い)きたいわよ。
桜の祖父: ハワイ? わ、分(わ)かった。急(いそ)いで買(か)い物(もの)して、福引券(ふくびきけん)を手(て)に入(い)れてこよう。
桜: うん。
ナレーション: しかし、十分後(じっぷんご)。
桜: あ、ハワイ行(い)きたかったな。
桜の祖父: そ、そうじゃもん。
桜: 佐々木(ささき)の爺(じい)さんだ。
桜の祖父: おや、住職(じゅうしょく)さんじゃな?
桜: 住職(じゅうしょく)?
桜の祖父: お坊(ぼう)さんのことだよ。工事(こうじ)をしたりお寺(てら)を管理(かんり)する人(ひと)じゃ。あ、困(こま)ってる人(ひと)の話(はなし)を聞(き)いてくれたりもするのな。
桜: 困(こま)ってる人(ひと)の? じゃ、どうやったらハワイが當(dāng)(あ)たるか分(わ)かるかな。それから百恵(ももえ)ちゃんに會(huì)(あ)う方法(ほうほう)とかも!
桜の祖父: そ、それはさすがいい。
桜: こんにちは。
住職: じゃ、佐々木(ささき)さん、よかったら今晩(こんばん)鐘(かね)をつきに來(lái)(き)てくださいな。
佐々木: はい。
桜: 鐘(かね)?
佐々木: 除夜(じょや)の鐘(かね)ですよ。人間(にんげん)には煩悩(ぼんのう)が百八(ひゃくやっ)つあるのご存知(ぞんじ)ですか。
桜: 煩悩(ぼんのう)? 百八(ひゃくっやっ)つ?
佐々木: ええ。煩悩(ぼんのう)とは簡(jiǎn)単(かんたん)に言(い)うと人間(にんげん)の欲(よく)のことです。あれもしたい、これもしたい。除夜(じょや)の鐘(かね)をつくとその煩悩(ぼんのう)がなくなると言(い)われてるんです。
桜: へえ、煩悩(ぼんのう)ね。百八(ひゃくやっ)つの。わあ! さすが大晦日(おおみそか)だね、ごちそうだよ!
桜の母: 一年(いちねん)の最後(さいご)だからね。それより丸子(まるこ)、部屋(へや)の掃除(そうじ)は終(お)わったの?
桜: ああ、いやだね。いくら私(わたし)でもとっくに。
桜の姉: 終(お)わってないわよ。
桜: お姉(ねえ)ちゃん!
桜の姉: あんた、今(いま)噓(うそ)つこうとしたでしょう?
桜: いや、いやだね。まだ何(なに)も言(い)ってないのに。
桜の母: 丸子(まるこ)、気持(きも)ちよく年(とし)ためにも、ユハン食(た)べたらやりなさいよ! 続(つづ)き!
桜: ええ?
桜の母: ええじゃありません!
桜: 早(はや)くしないと百恵(ももえ)ちゃんに間(ま)に合(あ)わないよ。あ、相変(あいか)わらずかっこいいね、秀樹(shù)(ひでき)は。お姉(ねえ)ちゃんが夢(mèng)中(むちゅう)になるのも分(わ)かるよ。不味(まず)い! 早(はや)く片付(かたづ)けないと。あ、年賀狀(ねんがじょう)もまだだった! どうしょう? よーし、もういいや! こうなったら三枚(さんまい)だけで。ええと、玉(たま)ちゃんに智子(としこ)ちゃん。それから花輪君(はなわくん)と。
ナレーション: 花輪君(はなわくん)に出(だ)すのは、もちろん冬休(ふゆやす)みに行(い)く海外旅行(かいがいりょこう)のお土産(みやげ)を期待(きたい)してある。
桜: あ、長(zhǎng)山君(ながやまくん)と野口(のぐち)さんにも出(だ)して行(い)こうかね。何(なに)か知恵(ちえ)をかりたり、お笑(わら)いの情報(bào)(じょうほう)がもらえるかもしれないからね。あ! もうこんな時(shí)間(じかん)? どうしよう? もうすぐ紅白(こうはく)は始(はじ)まちゃうよ! 一體(いったい)どうしたら?
桜の母: あら。終(お)わったの?
桜: う、うん。
桜の母: そう。
桜: 百恵(ももえ)ちゃんは? ああ! 噓(うそ)。
桜の姉: あんたがいけないのよ。いつも面倒(めんど)くさがって掃除(そうじ)の途中(とちゅう)で漫畫(huà)(まんが)とか読(よ)み始(はじ)めちゃうんだから。
桜: そっ、そんな。
桜の姉: これに懲(こ)りたら來(lái)年(らいねん)からが何(なん)でも計(jì)畫(huà)的(けいかくてき)にやる事(こと)ね。自分(じぶん)の意志(いし)に負(fù)(ま)けずに、誘惑(ゆうわく)に負(fù)(ま)けずに。
桜: お爺(じい)ちゃん、私(わたし)、鐘(かね)をつきたいよ。煩悩(ぼんのう)を、煩悩(ぼんのう)をなくしたいんだよ。一年(いちねん)の最後(さいご)に百恵(ももえ)ちゃんを見(jiàn)逃(みのが)すなんて!
桜の祖父: ま、丸子(まるこ)。
桜: お祭(まつ)り見(jiàn)(み)たい。
桜の祖父: よし、丸子(まるこ)。早速(さっそく)並(なら)ぼうか。
桜: あ、暖(あった)かいね。極楽極楽(ごくらくごくらく)。
桜: 丸子(まるこ)、早(はや)めに並(なら)ばんと。
佐々木の爺さん: おや、丸(まる)ちゃん、桜(さくら)さん。
桜: 佐々木(ささき)の爺(じい)さん。
佐々木の爺さん: 鐘(かね)をつきに來(lái)(こ)られたのですか。
桜: そうなんだ。私(わたし)の煩悩(ぼんのう)を鐘(かね)ついてなくしてもらおうと思(おも)って。
佐々木の爺さん: ほほほ。そうですか。
桜: 佐々木(ささき)の爺(じい)さんも鐘(かね)つきに來(lái)(き)たの?
佐々木の爺さん: 私(わたし)は町內(nèi)會(huì)(ちょうないかい)のお手伝(てつだ)いを少(すこ)し。どうです? 甘酒(あまざけ)を飲(の)んで少(すこ)し暖(あたた)まりませんか。
桜: 甘酒(あまざけ)! 飲(の)む、飲(の)みます! 暖(あった)まる。もう一杯(いっぱい)ください!
桜の祖父: 丸子(まるこ)。そんなに飲(の)まんほうが。
桜: 大丈夫(だいじょうぶ)だよ。
佐々木の爺さん: ほほ、どうぞ。
桜: いただきます!
藤木: 甘酒(あまざけ)ください。
桜: 藤木(ふじき)!
藤木: 桜(さくら)!
桜: こんばんは。
藤木の母: こんばんは。
桜: いいね、親子(おやこ)水(みず)入(い)らず。
藤木: まあね、いつも二人(ふたり)とも仕事(しごと)で忙(いそが)しいけど、こう言(い)う特別(とくべつ)な日(ひ)くらいはね。
桜: 藤木(ふじき)も鐘(かね)つきに來(lái)(き)たの?
藤木: 鐘(かね)?
桜: 除夜(じょや)の鐘(かね)をつくと、煩悩(ぼんのう)がなくなるって話(はなし)だよ。まあ、卑怯(ひきょう)まで直(なお)るかどうか分(わ)からないけど。
藤木: え?
桜: それよりよかったよ、會(huì)(あ)えて。今年(ことし)、藤木(ふじき)に年賀狀(ねんがじょう)出(だ)さないことにしたから、今(いま)挨拶(あいさつ)しとくよ。來(lái)年(らいねん)もよろしくね。
藤木: え? うん。
ナレーション: 一年(いちねん)の最後(さいご)にこんなことばかり言(い)われる藤木(ふじき)っていったい。
桜: 結(jié)構(gòu)(けっこう)並(なら)んでるね。
桜の祖父: そうじゃな。
桜: ああ、でもなんかワクワクするね。これで煩悩(ぼんのう)が消(き)えるかと思(おも)うっと???かんが)えて見(jiàn)(み)たら悪(わる)いのは全部(ぜんぶ)煩悩(ぼんのう)なんだよね。私(わたし)だっていっつもあれ食(た)べたいこれがしたいってわけじゃないのにさ!
ナレーション: どの口(くち)が言(い)っているのだ?
桜: うん。
桜の祖父:? どうしたんじゃ?
桜: お爺(じい)ちゃん、どうしょう? トイレ行(き)きたい。
桜の祖父: 何(ばに)と? だから甘酒(あまざけ)を飲(の)み過(guò)(す)ぎではいかんと言(い)ったのに!
ナレーション: まともや、己(おのれ)の欲望(よくぼう)のせいで苦(くる)しめられる丸子(まるこ)。
桜: ちょいとトイレ行(い)って來(lái)(く)るよ。うん? な、何(なん)か怖(こわ)いね。出(で)た!
藤木: 桜(さくら)、桜(さくら)、僕(ぼく)だよ。
桜: 藤木(ふじき)!
藤木: いいえ、甘酒(あまざけ)を飲(の)み過(guò)(す)ぎちゃってね。桜(さくら)もかい?
桜: まあね。まったくやなんあるよ。あ!
藤木: うん?
藤木と桜: のっぺら坊(ぼう)!
桜: でっ、出(で)た!
藤木: ああ!
住職: うん? どうしたんじゃ?
桜: あ、お坊(ぼう)さん。
住職: はははは、そうかい。儂(わし)を妖怪(ようかい)だと思(おも)ったかい。
桜: はい。
桜の祖父: お、丸子(まるこ)。無(wú)事(ぶじ)戻(もど)って來(lái)(き)たか。
桜: うん。
住職: じゃ、儂(わし)はこれで。
藤木: あのう、お坊(ぼう)さん! 鐘(かね)をついたら直(なお)れますか。
住職: 直(なお)る? 直(なお)るとは?
藤木: 僕(ぼく)の卑怯(ひきょう)です。
桜: 藤木(ふじき)。
桜の祖父: 大丈夫(だいじょうぶ)かね、丸子(まるこ)。眠(ねむ)くなって來(lái)(き)たんじゃ。
桜: 何(なん)だって鐘(かね)をつくためになんだからね、なんでして頑張るよ。
桜の祖父: そうかい。丸子(まるこ)。やっぱり帰(かえ)ったほうがいいかの。
桜: 大丈夫(だいじょうぶ)だよ。そうだ、お爺(じい)ちゃん、眠気覚(ねむけざ)ましにしり取(と)りをしようよ。
桜の祖父: そう、いいの。
桜: じゃ、私(わたし)から。雪(ゆき)。
桜の祖父: キリン。
ナレーション: 終了(しゅうりょう)。
桜の祖父: すまん、丸子(まるこ)。もう一度(いちど)じゃ。
ナレーション: 一方(いっぼう)そのごろ。
桜の姉: ああ!
桜の母: どうしたの? あの子(こ)ったら!
桜: ま、マントヒヒ。
桜の祖父: ひいひいさん。あ! また「ん」になってしまった! 丸子、もう一回(いっかい)頼(たの)む! これ、老(お)いぼれにもう一度(いちど)チャンスを! 困(こま)ったのう、やっぱり寢(ね)てしまったか。こうなったら、やむを得(え)ない、おんぶしたままで、煩悩(ぼんのう)を消(け)したがっていた丸子(まるこ)のためじゃ!
住職: 大丈夫(だいじょうぶ)ですかな?
桜: いいえ、愛(ài)(あい)するこのとむぞ!
ナレーション: しかし、そのあいするまご、丸子(まるこ)は。
桜: あ、極楽極楽(ごくらくごくらく)。
ナレーション: 煩悩(ぼんのう)まみれの夢(mèng)(ゆめ)を堪能中(たんのうちゅう)。新年(しんねん)早々(そうそう)、母(はは)から雷(かみなり)が落(お)ちるとは知(し)らずに。結(jié)局(けっきょく)、丸子(まるこ)は丸子(まるこ)のママ、來(lái)年(らいねん)へ続(つづ)く。
桜の祖父: ああ!